黒体
熱放射の考え方でしばしば黒体というものが登場します。これはすべての波長の電磁波を吸収する理想物質であり、ある温度における最大の熱放射をする物体でもあります。物体には電磁波を吸収、反射、透過する性質があり、吸収率+反射率+透過率の和は常に1になります。すべての波長を吸収する、つまり反射、透過がゼロである物体が黒体です。

放射のエネルギー
ある温度の物体が単位面積当たり放射する電磁波のエネルギーは統計的に求められており、放射率x比例定数x温度の 4 乗で求められます。
放射エネルギー E[W/m²]=放射率εxステファンボルツマン定数σ[W/m²K⁴]x温度T[K]^⁴
ステファンボルツマン定数
光子のエネルギーに関するプランク定数、エントロピーに関するボルツマン定数で定義される定数であり、(↓の式)で表されます
c:光速度、k:ボルツマン定数、h、プランク定数

キルヒホッフの法則
物体の吸収率=放射率となる法則
このため、吸収率が1である黒体は放射率も1であり、ある温度における最大の放射をする理想物体が黒体となります。
放射率
放射率とは理想物体である黒体を放射率1としたとき、実際の物体の放射エネルギーの黒体に対する比になります。物体の材質や表面の状態、温度によっても変動する数値であるため、実験的に求める必要があります。一般的な材料ではアルミニウムは放射率が非常に小さく0.1以下程度、レンガなどは放射率が大きく0.9程度になります。
エコムの事例
赤外線加熱により乾燥・硬化・予熱などの加熱処理時間を驚異的に短縮

放射による熱エネルギーを利用した加熱方式に赤外線加熱があります。被加熱物がもっている固有の吸収スペクトルに直接赤外線が共鳴吸収することで、熱エネルギーが発生し、高速な昇温が可能となります。従来の熱風加熱と比べ、大幅な処理時間の短縮が可能となります。
赤外線の加熱原理
- 対象物に赤外線(電磁波)を放射する。
- 対象物の分子にぶつかる。 (それぞれ固有の波長に対して)
- 電磁波エネルギーによる分子が振動する。 (分子振動が熱エネルギーに変換される)
- 振動によって熱が発生する(自己誘導加熱を起こし、原子、分子は自由かつランダムに動く熱運動をしている)

EIRヒータ
赤外線加熱は物質固有の吸収特性に合ったヒータを選択することが最も処理時間の短縮に繋がります。赤外線で急速に昇温させ、熱風で均熱を保持することで、時短と同時に省エネを図ることができます。

エコムの赤外線ヒータ(EIRヒータ)には4つの特徴があります。
均一な加熱が可能
- フラットパネル採用で加熱物に均一な加熱が可能
- ヒータ表面温度を調節できるよう、熱電対を内蔵することでコンパクト化を実現
- ヒータサイズは大型化に対応し最大1,000mm × 300mm まで製作可能
高効率
- 遠赤外線放射率のよいステンレス特殊合金を採用し放射波 3~8μm の幅広い放射域
- 熱電対内臓によりヒータ表面温度を最適温度コントロール
- 全面パネル型のため電磁波の放射伝熱面積比が大きく、従来品より高効率
長寿命
- 遠赤外線放射表面はコーティングレスのため、熱剥離が無い
- 全面に特殊処理を施してあるため、長寿化を実現
規格外の寸法への対応
- その他各種、最適な大きさに加工可能です。