熱伝導の基礎知識

熱の伝わり方には熱放射、熱伝達(対流)、熱伝導の3つがあります。このうち、固体や静止流体内での熱の伝わりやすさを示すのが熱伝導です。

高温物体から照射される赤外線による伝熱。赤外線を吸収しやすい物質は昇温がはやい

媒体となる流体が移動することで伝熱が行われる。強制的に撹拌することで温度効率が上昇する

物質の移動のない固体内部での伝熱。材質によって伝導率が異なる

熱伝導のしやすさを表す物理量を熱伝導率といい、単位は[W/(m・K)]で表されます。熱伝導率はある温度の物体がもつ物理性質であり、数値は実験的に求められています。 一般的に金属は熱伝導率が大きく、樹脂や木材、水などは金属の1/100以下程度、空気はさらにその1/10程度の熱伝導率をもちます。熱伝導の大きい物体ほど熱が伝わりやすいため、同じ温度であれば金属がより熱く感じるのは経験的にご存じの人も多いでしょう。

熱と電気の相似性

熱伝導についての熱回路は、よく知られている電気回路のオームの法則に対応付けることができます。これを電気回路と熱回路の相似性と呼んでいます。熱流が温度の高いほうから低いほうに流れるのは、電流が電位の高いほうから低いほうに流れるのに対応しています。

熱回路

種別 記号 単位
温度 T [K]
温度差 ΔT [K]
熱流 Q [W]
熱量 Q [J]
熱抵抗 R [K/W]
熱伝導率 λ [W/(m・K)]
熱伝達率 h [W/(m2・K)]

電気回路

種別 記号 単位
電位 E [V]
電位差 E [V]
電流 I [A]
電気量 Q [C]
電気抵抗 R [Ω]
導電率 σ [S/m]

熱伝導率をλ[W/(m・K)]断面積をA(m2)
長さをL(m)とすると
熱抵抗R=L/(λ・A)
となります。
つまり、熱伝導の場合の熱抵抗は
物質の形状(L・A)と材質(λ)によって決まります。

断熱材

熱伝導率だけ見れば、断熱をするのに最も効果的なのは空気の層で覆ってしまうことです。ただし、これは静止状態の空気の話で、実際の空気は流体であり、温度差による体積変化だけでも対流が起きてしまうため、熱伝導+熱伝達で熱が伝わりやすくなってしまいます。

そのため、空気をなるべく対流させないよう保持したり、静止空気以上の性能で熱伝導を防ぐする役割を果たすのが断熱材です。低温~常温の断熱では発泡スチロールなどがなじみがあると思います。高温になる加熱装置では温度帯に応じてロックウール、セラミックウール、キャスタブルなどが使用されます。

ロックウール 0.05 650℃
セラミックウール 0.05 1600℃
耐火キャスタブル 0.24 1600℃
各種断熱材の熱伝導率[W/(m・K)] @200℃ と最高仕様温度

断熱材は劣化します!!

湿気を含んで内部結露が発生したり重力により長期間熱を加えることで断熱効果を得られなくなってしまいます。

また、当然のことですが表面に傷が入ってしまったり、断熱材が剥がれた箇所から熱が漏れていきます。

無駄な熱を逃がさないように断熱材を施工しますが断熱材にも寿命があります。

知らない間に、外部への放熱が増えていることもあります。

また断熱材を施工し作業環境がよくなった事例もございます。

既存の断熱材の交換や、ダクトへの断熱材の施工も当社にお任せください。

エコムの断熱施工について

工業炉では炉壁温度を下げる為に断熱材を使用します。

断熱材のメリットとして熱伝導率が低いので炉外への熱損失を抑えることができるのと無駄な熱損失を減らすことで省エネ効果も期待できます。

施工には炉内使用温度によって適切な厚みを選定する必要があります。

余裕を見すぎた選定をすると、材料コストの高騰、施工工事負担、装置レイアウトのスペースが大きくなるデメリットがあります。

樹脂加熱事例

樹脂の押出し成形品の応力除去テストの依頼がきました。いままでバッチ炉で8時間かけていた作業をインライン化して時短・省スペース化を図るためのテストです。エコムテクニカルセンターでの熱処理テストでは金属だけでなく、樹脂もよく扱いますが、どちらかというと肉薄の成形品が多く、厚みのある“塊”は初めてでした。実際にトライしたところ、100℃上げるのに 4 時間以上もかかりました。樹脂と金属では熱伝導率に雲泥の差があることは当然知っていたのですが、あらためて素材の違いや形、大きさによって昇温時間が大きく異なることを実感させられるテストでした。

気になるロックウールとアスベストとの違い

ロックウールとアスベストは外見が似ていますが異なるものです。アスベストは人体の健康に害があると一般に知られていますが、ロックウールは日本や米国では発がん性が無いと分類されています。 ロックウールは耐火性に優れる断熱材として広く普及されており。防音材としても使われています。

断熱強化による省エネルギー

炉表面の温度を下げることで、放散熱量を削減することが出来ます。同じ断熱厚みでも、より高機能な断熱材を使うことで表面温度を下げることが出来ます。

使用条件 : 炉内温度500℃ / 大気温度30℃ / 断熱厚さ(1)150mm

通常断熱
ロックウール150mm(熱伝導率:0.093[W/(m・K)] at 282℃)
断熱強化
高機能断熱材25mm(熱伝導率:0.021[W/(m・K)] )
+ ロックウール 125mm(同:0.066 at 188 ℃)