赤外線について

エコムでは赤外線を使った最も有効なヒーターと加熱条件を特定し、新しい装置に反映させています。
興味がありましたら、当社のテスト装置をお試しください。テスト装置が常時使用可能です。

赤外線の発見

赤外線について

赤外線を発見したのはイギリスの天文学者ハーシェルです。 ハーシェルは、1980年太陽光をプリズムに通していた時、7色に分離した可視光の赤色より外側の位置に置いた温度計の指示値が上昇したことに気づきました。このことで目には見えないが、物を温める「赤外線」が存在することを発見しました。

赤外線の中の遠赤外線

上記にて説明したように「物を温める光」は赤色の外側に存在していることから、「赤外線」と名付けられました。
赤外線は、「X線」、「紫外線」、「可視光線」などと同じ「電磁波」であります。「波長」によって、その呼び名と性質が違うわけです。
赤外線は「近赤外線」と「遠赤外線」に分けられます。遠赤外線協会では、地球上に広く分布し、動植物に不可欠な水の分子振動波長である3μmを基点に、私たちの身の回りにある品物の分子振動は長を含む波長3μm(ミクロン)~1mm(ミリ)= 1,000ミクロンまでを遠赤外線と定義しています。

赤外線の中の遠赤外線

どんなものが遠赤外線を放射するのだろうか?

絶対零度(-273℃)という低温でない限り、全ての物質は遠赤外線を放射し、温度が高ければ高いほど、放射量(エネルギー)が多くなります。温度が同じ場合は、物質により、また、その表面状態により、放射量に違いが生じます。中でもセラミックは遠赤外線を多く放射します。金属は放射量が少なく、よく反射しますので、ヒーターの裏に設置し、反射板として使われます。
同じ物質が2つ離れて存在する場合に、温度が高い方から低い方へエネルギーが放射され、熱が移動した結果、長い時間の後には同じ温度になります。

近(中)赤外線と遠赤外線の違いと、有効な被加熱物

赤外線は光・電磁波の一種で、近赤外線は可視光線に近く、遠赤外線は電波に近いという特徴があります。

対象によって最適な赤外線の波長と強度を選択することにより、最も効率の良い熱処理を行うことができます。

  近(中)赤外線 遠赤外線
波長(利用域) 0.78μm ~ 3μm (2.5μm ~ 3μm) 3μm ~ 1000μm (3μm ~ 30μm)
温度域 3000℃ ~ 7000℃ 700℃ ~ 1000℃
主なヒーター ハロゲンヒーター、ランプヒーター セラミックヒーター、パネルヒーター
立ち上がり 数秒程度 数分程度
寿命 放射体温度が高いため比較的寿命は短い
数千時間程度(ヒーター種により差異有り)
ヒーター表面温度は低く寿命は長い
数万時間程度(ヒーター種により差異有り)
有効な被加熱物 透過性の高いもの、金属など 樹脂、水分、塗料など
近赤外線

ガラスや樹脂フィルム等の透過性のあるワークで接着剤を乾燥させる場合など。加熱側表面(入射面)と裏側で大きな温度差になりにくい。

遠赤外線

異なる吸収波長領域を同時に加熱する場合など。塗料の乾燥などで黒や紺など濃いめの色と白系の薄い色でも大きな温度差になりにくい。

COLUMN 勘違いしがちな遠赤外線技術3選

  1. 黒い物体のほうが赤外線を良く吸収する?

    結論だけ言えば相関関係はありません。 あくまでよく吸収しそうな印象というところです。

    青空の下黒い服が暖かくなるイメージが強く、また赤外線を全て吸収するモデルを黒体とよぶことから漠然と黒い物体の吸収率が強いイメージを持たれている方が多いです。

    • ただしそれはあくまで [可視光] の吸収率が良いだけにすぎません。
      遠赤外線の範囲で果たしてそれは透明なのか吸収するのか、人の目ではわかりません。
    • 逆に言えば透明な物質であっても赤外線領域ではよく吸収する物質も多いです。
      (特に樹脂関係は非常に良い吸収率を持った物質が多い印象です。)
    Q. 黒い服は温まりやすいから赤外線を吸収するのでは?
    A. 太陽の光は可視光にも充分な熱エネルギー含んで飛んできているので、それを吸収できる黒い服は温まりやすいのです。
  2. 遠赤外線加熱によって物質の中まで加熱が可能なのか?

    赤外線加熱についてよく言われることが「中まで浸透して内側から温めることが可能」という文句がある。
    実際、さまざまな物質には固有の吸収波形があり、透過するデータが存在する。

    しかしながらそれらは極薄の試料に対しての測定データであり、工業製品に対してその特性が影響を及ぼすことはかなり低いとみてよいです。その為、遠赤外範囲の波長(4~1000μm)にて一般的な非金属材料は表面から大きくても200μm深さまでしか浸透しません。 その分表面の加熱効率は大きく、素早い昇温が可能なため、小サイズの製品加熱や、塗膜の乾燥などに適していると言えます。
    ※逆に極薄のフィルムなどは赤外線を透過する可能性がある為、 加熱が可能かどうか検討の必要があります。

    なお、金属材料については特に遠赤外線領域での反射率が大きく、遠赤外線のみで加熱するのは難しいです。

  3. 非加熱物の吸収波長に合わせたほうが昇温ははやくなるのか?

    赤外線加熱をするにあたって製品の吸収波長を気にされた方はいますでしょうか?

    先の項目でも述べた通り製品によって吸収波長は異なり、その中でも突出して吸収率の高い波長域が存在します。これらは製品組成の同定などによく利用され、一般的な物質であれば公開されているデータもあります。

    一方、赤外線ヒーターの説明として温度によって、”ピーク波長(最も放射される波長)”が遷移することが上がることが多いです。(“ウィーンの変位側”より)

    ここで、赤外線加熱をする際に製品を構成する物質の吸収波長帯に合わせてピーク波長をコントロールしてやればより早く加熱することできるかと考えられそうですが実際はそんなことはありません。

    なぜならば、ヒーターから放射される赤外線の波長はピーク波長を中心に幅広く分布しているためです。

    特に加熱に寄与する熱エネルギー量はヒーターの絶対温度の4乗に比例しており、低い温度帯が放射する波長(もとい熱エネルギー)を内包してます。

    当然放射される波長帯が広がることによって吸収されない部分が増加する可能性はありますが、それでも温度が高いほうが吸収する熱エネルギー量が多い為、基本的には波長を合わせるより単純に温度を高くしてやるほうが昇温は早くなります。