工業炉の温度管理は温度センサから

温度センサは工業炉の制御に必要不可欠な機器の1つです。炉内やワークの温度を検知し、温度調節計へと信号を送り、設定温度にバーナやヒータの出力を制御します。温度センサが正常に動作しないと、炉内の温度がわからず製品の品質に問題が出たり、最悪の場合装置が暴走してしまいます。 今回はエコムで使用する温度センサについて紹介します。

温度センサの種類

温度センサは接触式と非接触式の大きく2つに分類されます。
接触式は固体液体気体にセンサを直接接触させて温度を測定するもので、熱電対、測温抵抗体、サーモスタットなどがあります。
非接触式は熱をもった物質が放射する赤外線を測定するもので、放射温度計やサーモグラフィなどがあります。

温度センサの種類(分類)

熱電対

異なる二種の金属に熱を加えると起電力が発生する現象(ゼーベック効果)を利用したセンサです。金属の組み合わせによっていくつか種類があり、温度帯や精度が異なります。エコムでは工業用で最も利用されていて幅広いレンジで測定可能なK熱電対を標準採用しています。エコム装置で主に温度制御に利用するシース付き熱電対のほかに、ワーク表面や、炉壁温度を測定する接触式表面温度計にもK熱電対が使用されています。

熱電対

測温抵抗体

温度によって電気抵抗が変わる金属の特性を利用したセンサで、Pt100白金測温抵抗体がよく利用されています。低温(-200℃~600℃付近)で安定性が高く高精度な測定が可能で乾燥炉などで多く使われています。反面、高温測定には不向きなセンサです。

測温抵抗体

サーモスタット

電気ヒータの高温異常用として液体膨張式のサーモスタットがよく使用されています。
ダイヤルで設定値を変更することができます。

放射温度計

加熱後のワーク温度の確認や装置の表面温度を測定するのに利用します。非接触で温度測定が可能なため、遠距離よりスポット測定する際に使用されます。

サーモグラフィ

省エネ診断などで装置の表面温度を測定するのに利用します。温度が画像データとして可視化出来るため、広範囲での測定に適しています。

サーモグラフィ

熱電対の特徴と選び方

種別 使用温度範囲(℃) 特徴
B 熱電対 600 ~ 1,500 耐酸性・耐薬品性が高い。600℃以下の温度測定が不可能。
R, S 熱電対 600 ~ 1,400 精度が高く、耐酸性も高い。コストパフォーマンスに難。
N 熱電対 -200 ~ 1,200 K熱電対の改良型。安全性の強化及び安定した温度指示が可能。
K 熱電対 -200 ~ 1,000 工業で最も使用されている。使用温度範囲が広く耐久性もある。
E 熱電対 -200 ~ 700 高精度での測定向き。電気抵抗が大きい。
J 熱電対 0 ~ 600 還元性雰囲気に適している。
T 熱電対 -200 ~ 300 低温での測定向きで精度が高い。劣化しやすい。

熱電対の場所による温度制御について

加熱設備を製作する上で、どの場所で温度制御をするのかは非常に重要な要素となります。お客様のワークに対してどの位置が一番効率よく、またオーバーシュートせずに加熱できるかを考えながら設計していきます。右の参考図を見ながら代表的な温度制御点を解説します。

代表的な温度制御店

炉内雰囲気温度 が制御点 A

炉内の雰囲気温度を制御する方式です。炉内にワークが投入されると雰囲気温度が下がる為、センサ部で出力を上げようと指令を出します。この時吹き出し口にワークが近い場合、目的の温度以上の熱風が当たる可能性があるので注意が必要です。(オーバーシュート)

ワーク温度 が制御点 B

ワーク自体の温度で制御する方式です。処理したい温度を最も正確に制御することが可能です。大型ワークのバッチ処理などに採用される事がありますが、都度センサを付け替える手間が発生するのと連続方式では対応できないデメリットがあります。

熱風吹き出し口温度 が制御点 C

熱風吹き出し口の温度で制御する方式です。常に設定した一定温度の熱風がワークに当たる為ワークは設定温度以上に上昇しません。オーバーシュートの観点からも有効な方式になります。ただし、風量・風速・ノズル形状などでワーク自体の温度プロファイルが大きく変化する為検証のテストが必要になります。

温度センサの故障対策

加熱炉において温度調節計とは別に高温異常計を取り付けることはもちろんのことですが、その高温異常計が故障していたら、元も子もありません。基本的には、なにごともなく正常な運転をしていれば高温異常が発生することはありません。ですから、いざというときに動作するかが重要なのです。当社の定期点検では、高温異常計が正常動作をするかのチェックもおこないます。

過去に当社でも下記のようなことを経験いたしました。

  1. 定期点検をしていない設備にて、高温異常計が壊れた状態で温度調節計も壊れ、温度が上昇し続け燃焼室が燃えた。
  2. 定期点検時に高温異常計の故障がみられ、交換推奨をさせていただいたが交換できず、排気ファンが故障し設備内が高温になり焼損した。

火災に発展してしまうと、大変危険なうえに、復旧までに時間がかかり多大な損害をうみます。

高温異常計が現状ない設備に関しましては提案・施工までおこなっておりますので是非、お声掛けください。