過熱蒸気

いま注目されている加熱方式として「過熱蒸気」を利用したものがあります。過熱蒸気とは、水を飽和温度(常圧で約100℃)以上に加熱した蒸気のことです。高温空気による熱風加熱に比べ、加熱能力が高いとされることから、様々な分野への実用に向けて研究が進んでいます。

環境にも優しい! 過熱蒸気の主な特徴

過熱蒸気の主な特徴

伝熱性が高い

空気による熱風加熱で利用される伝熱は主に対流伝熱のみですが、過熱蒸気はこれに加え凝縮熱、放射熱を利用します。これは高温空気にはない蒸気ならではの特性で、単位量あたりの保持熱量が非常に大きく、この熱量を利用し短時間での熱処理を可能とします。

大気圧加熱が可能

ボイラなどで利用される高圧蒸気と違い、大気圧での高温化を行うので、特殊な高圧容器などは必要としません。

加熱環境の O₂ 濃度が低い

過熱蒸気は水を加熱した蒸気であるため、空気(酸素)がほとんど含まれません。そのため酸化しやすい製品や、発火しやすい製品などの加熱では酸化、火災を防ぐメリットがあります

これからの用途開発が期待されている過熱蒸気ですが、現時点では以下のようなデメリットも考えられます。

  • 大容量の加熱や熱風循環加熱には不向き
  • 加熱初期にドレンが発生するので水分を苦手とする製品には不向き
  • 開放系や頻繁に炉の開け閉めがある装置ではエネルギーロスが大きい

エネルギー効率の高い「潜熱」とは

潜熱とは固体→液体、液体→気体などの相変化の際に物体に加えられる(もしくは発熱する)熱量のことです。なじみのある言葉としては気化熱が潜熱の一種で、汗で体が冷えたり、アルコール消毒でひんやりするのは液体→気体となる際の気化熱が体から熱を奪うために起こる現象です。過熱蒸気では気化熱の反対で、気体→液体に変化する際の凝縮熱を物体に与えるため、効率的な加熱を行うことができます。潜熱の対義語として相変化のない加熱に使われる熱を顕熱といいます。

エコムテクニカルセンター 過熱蒸気発生装置

エコムテクニカルセンターには過熱蒸気のテスト装置が常時使用可能です。エコムでは小型炉のノズルから過熱蒸気を吹き出し、テストを実施します。過去には金属熱処理・食品加工・滅菌・洗浄・乾燥などの様々な用途でテストを実施しております。ご興味が御座いましたら過熱蒸気を体験ください。

過熱蒸気ワークテスト実績

  • 金属部品の急速昇温
  • 金型付着物質の焼却洗浄
  • 食品加工の滅菌/殺菌処理・汚泥/スラッジの乾燥

テスト機仕様

熱源 過熱蒸気(UPSS-W20)
温度域 700℃
蒸気発生量 5~20kg/h
特徴 700℃までの耐熱試験が可能です。
備考 被加熱物が酸化せず、火災の危険性が低い