省エネ法改正(2018年以来5年ぶり)
2023年4月より改正省エネ法が施行されます。今回の改正のキーワードはズバリ『非化石エネルギー』。改正の要点について解説します。
今回の改正により名称も『エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律』へと変更となり、化石燃料だけでなく、エネルギー全体の合理化を目指したものへと変わります。
全エネルギーの使用の合理化<法令上の“エネルギー”の定義の変更>
改正前 | 改正後 |
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エネルギーとは化石燃料及び化石燃料由来の熱・電気などの化石エネルギーのことを指す | エネルギーとは水素燃料などの非化石燃料や自然エネルギーなどの再生可能エネルギーなどすべてのエネルギーのことを指す |
特定事業者へのベンチマーク目標や年平均1%以上の削減義務などで化石エネルギー使用の合理化を目指す | 規制や補助金などを制定し全エネルギーの使用を合理化を目指す |
非化石エネルギーへの転換の促進
改正前 | 改正後 |
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非化石エネルギーの利用は事業者の自主的な取り組みにまかせる | 特定事業者へ非化石エネルギー転換の中長期計画の作成や定期報告などを求め、非化石エネルギーへの転換を促進する |
特に主要5業種には転換の数値目標を設定し、転換を促す。 例)自動車製造業:全電気エネルギーのうち59%を非化石エネルギーとする(案) |
ディマンドリスポンス(DR)等の電気需要の最適化
改正前 | 改正後 |
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電気の一次エネルギー換算係数には火力平均係数を使用し、電気需要の平準化を目指す | 電気の一次エネルギー換算係数には時間帯別最適化原単位(火力平均係数より低い再エネ係数や、逆に高い火力重み付け係数)を使用し、電気需要の最適化を目指す |
特定事業者に対してDR実施回数の報告を義務とし、評価を行う |
特定事業者とは
エネルギー多消費事業者のこと。 事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算で1500kL以上の事業者を指し、省エネ法で事業ごとの数値目標や、エネルギー消費削減義務などが定められている。
ディマンドリスポンス(DR)とは
ディマンド(デマンド)=需要、リスポンス(レスポンス)=反応
電気需要(使用量)を制御することで電力需給バランスを調整し、発電コストの削減や非化石エネルギーの有効利用を促進する仕組み
資源エネルギー庁HPより
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electricity_measures/dr/index.html?ui_medium=lpene
時間帯別最適化原単位の計算例
100kW、1hのエネルギーを使用した場合
- <13A>
- 100kWx1hx3600/1000=360MJ
- <電気・火力平均係数9.4MJ/kWh>
- 100kWx1hx9.4MJ/kWh=940MJ
- <電気・再エネ係数3.6MJ/kWh>
- 100kWx1hx3.6MJ/kWh=360MJ
これまでは一次エネルギーに換算した場合、燃焼バーナに比べ電気ヒータの方が数値上高くなり不利であったが、再エネ係数を使用することで燃焼バーナ同等の一次エネルギー使用量となる。
※係数の数値は例であり、正確な数値は今後定期報告などをもとに算出を行う
省エネ法の基本
第1条 目的
この法律は、内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資するため、工場等、輸送、建築物及び機械器具等についてのエネルギーの使用の合理化に関する所要の措置、電気の需要の平準化に関する所要の措置その他エネルギーの使用の合理化等を総合的に進めるために必要な措置等を講ずることとし、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
第2条 定義
この法律において「エネルギー」とは、燃料並びに熱(燃料を熱源とする熱に代えて使用される熱であって政令で定めるものを除く。以下同じ。)及び電気(燃料を熱源とする熱を変換して得られる動力を変換して得られる電気に代えて使用される電気であって政令で定めるものを除く。以下同じ。)をいう。
この法律において「燃料」とは、原油及び揮発油、重油その他経済産業省令で定める石油製品、可燃性天然ガス並びに石炭及びコークスその他経済産業省令で定める石炭製品であつて、燃焼その他の経済産業省令で定める用途に供するものをいう。
第4条 エネルギー使用者の努力
エネルギーを使用する者は、基本方針の定めるところに留意して、エネルギーの使用の合理化に努めるとともに、電気の需要の平準化に資する措置を講ずるよう努めなければならない。
判断基準
エネルギー使用の合理化の実施を図るための判断基準の工場等における事項として以下のような項目があります。エネルギー使用者はこれらの項目について管理基準を定め、合理化に努める必要があります。また特定事業者は管理基準の遵守状況について定期報告の提出義務があります。
- イ. 燃料の燃焼の合理化
- ロ. 加熱及び冷却並びに伝熱の合理化
- ハ. 廃熱の回収利用
- ニ. 熱の動力等への変換の合理化
- ホ. 放射、伝導、抵抗等によるエネルギーの損失の防止
- ヘ. 電気の動力、熱等への変換の合理化
特定事業者とは
事業所全体でのエネルギー使用量が原油換算1500kL以上の事業者のことをいいます。熱技術ニュース82号でも特集しましたエネルギー管理士の資格を持つ、エネルギー管理統括者、エネルギー管理企画推進者の選任や、エネルギー使用の中長期計画書の提出、エネルギー使用状況の定期報告の義務があります。
設備の省エネ対策
工業炉は非常に多くのエネルギ―を使用して稼働しています。
その為、省エネ対策を行うことでランニングコストの削減が期待できます。
いくつか例を挙げると、
- 放散熱を抑えるために炉体断熱の強化(炉体、扉・シャッターのシール性)
- 排熱損失の低減のための最適化と排熱回収による 熱の再利用(熱交換器取付)
- 最適な空気比での運転(燃焼調整)
- 排熱回収バーナの採用(ENX)
- 熱の有効利用のための最適加熱(時間短縮) ・電動機へのインバータ採用
などがあります。
設備導入時にエコム標準の省エネ対策として、バーナであれば最適な空気比で調整することはもちろんですが、断熱部の施工はただ断熱材を厚くするということはなく、いかに炉内の熱を伝達させないか、最適な熱源や製品の最適加熱を考慮して設計を行います。
また必要に応じて省エネバーナ、熱交換器の提案を行います。
サーモグラフィーで炉体からの放熱を調べる
既存設備ではサーモグラフィーによって、炉体からの放熱が確認できます。 放熱箇所が特定できる為、今後の省エネ手法を選定する重要な情報になります。

取鍋予熱の省エネ化
取鍋とは集中溶解炉で溶解した金属を個別に配湯する際に利用する耐火容器です。従来は時間管理の燃焼で取鍋の予熱を行うため、排ガスからの熱損失が膨大になる問題がありました。弊社では熱交換器付きバーナに更新し排熱を再利用することと、時間管理から雰囲気温度管理に変更することで30%以上の省エネが実現できました!


ecoNext-Prime(ENX-P)バーナは「ecoNextシリーズ」の最新の工業用ガスバーナです。 バーナは熱交換器により高い省エネ性能を持ち、そして高温空気燃焼技術に基づく設計は大幅にNOx排出を減らすことができます。
状態管理 IoT
自分が担当されている設備の状態について、みなさんはどれくらい把握できていますか? 当社工業炉最適運用サービスMiteruneは、ガスの使用量や装置の運用具合の各データを可視化できる(1)“視える化”はもちろんのこと、当社もそのデータを把握することによりデータの推移を確認し機器類の劣化や燃焼状態の変化を読み取り修理の提案をする(2)“予防保全”。定期的にレポートを提出することによりユーザー様自身も装置の現状を把握できる(3)“現状把握と傾向監視”、不具合があった際に当社からサービスマンが現地に出向き対応する(4)“メンテナンスサービス”の4つの特徴がございます。
状態管理だけではもったいない! IoTの良さと人間だからできることのハイブリットが当社のMiteruneです。

こんな悩みをお持ちの方におすすめ
- 理者が高齢化しており、技能伝承がなかなか進まない
- OJTでしか伝えられない、仕組みが確立していない
- 技能が人についている
- 目で見て盗めの職人気質で、メンテナンスのデータ管理ができていない
- 不定期で不規則なメンテナンスに不満がある
- 予防保全ではなくトラブルがある度に対応している
- トラブル時のレスポンスに時間がかかる
- 知っている人しか知らない、メーカーに頼まないと分からない
電気 - ガスハイブリット加熱装置
再エネ係数の導入により、再エネ出力が高い時間帯は電気による加熱を行い、それ以外の時間帯は燃焼ガスを使用するなどで、これまで以上にエネルギー使用の合理化が可能。
また、天候や季節の影響を受けやすい再生可能エネルギー、海外情勢の影響を受けやすい化石エネルギーどちらにもフレキシブルに対応することができるなど、安定した生産に貢献できる。
