熱処理炉について

熱処理炉とは、焼入れ、焼戻し、焼きならし、焼きなましなど金属の機械的性質を変性させる炉のことです。
主に自動車産業や機械産業などの業種で熱処理炉という炉名称が使われています。熱設備は分類方法によって様々な呼称で呼ばれ、加熱目的や用途によって分類される際に「熱処理」を行うということで総じて熱処理炉と呼ばれています。

熱処理炉の見直しによる業務の効率化・生産力維持を図る

熱処理炉の生産性について見直される機会は意外に少ないです。「今までやっていたから」、「たぶんこれくらいだろう」と根拠のない条件で非効率な長時間稼働を強いていないでしょうか。

奇しくも新聞・テレビで連日耳にする「働き方改革」では私たちの働き方について問われています。スタッフの負担を減らし、業務の効率化、生産力維持を図るこの施策は、今日多くの企業で導入されてきています。ではこの「働き方改革」、人間にだけ導入して満足していませんか? 工場では人間のスタッフ以上に機械設備も働いています。熱処理炉のような設備にも同じような概念で見直すべきではないでしょうか。今こそ「熱処理炉の効率化」について考えてみましょう。

根拠のある条件設定で稼働させる

人も設備も昔は正しかった働き方が、今も正しい働き方だとは限りません。長年やってきた条件であっても実は根拠がなかったり、改造や仕様変更で根拠が変わっていたりということがあります。既存の条件が本当に最適なのか、一度テストしてみることをお勧めします。

新素材でも最適条件でのスタート

新人育成の効率化と同じように、熱処理炉でも新たな素材やプロセスでの条件決定を効率化することが必要です。社内にテスト機がない、業務が忙しくトライ&エラーができないなどお困りの場合はエコムテストセンターにて条件、プロセスの最適化をお手伝いいたします。

加熱時間の短縮 + 温度精度向上

お客様から多い要望のひとつが「より速く昇温させたい !!」というものです。熱処理炉には熱源や風速など、様々なパラメータが存在します。それをコントロールし、処理時間短縮に繋げるノウハウこそエコムのソリューション、通称時短炉です。エコムが提案する熱処理炉は、単純に処理時間を短縮するほかにも、下記の大きなメリットがあります

熱処理炉の加熱時間短縮+温度精度向上

加熱時間短縮

  1. 炉体のコンパクト化
    処理速度が上がるため、たとえば連続炉であれば同等の生産量で炉長を短く設計できます
  2. 生産量の増加(能増)
    処理時間の短縮により、時間当たりの生産性が増加します
  3. ランニングコスト低減
    コンパクト化による炉壁放熱量の低減や昇温時間の短縮により、単位生産量あたりの投入エネルギー量を削減できます

短時間で熱処理炉全体が昇温し、温度分布が均一となるため燃料などエネルギーの消費が少なくなり、時短と同時に省エネを図れます。

温度精度の向上

現状の昇温速度、温度分布を測定後、加熱最適化工事を施工。ワーク内の温度分布が均一化し温度制御の精度が上がることで、製品品質が向上します。

  • ワーク内温度分布の均一化
  • 温度制御の精度向上
  • 製品品質の向上
熱処理炉の温度精度の向上

熱処理炉を用いた時間短縮

高速熱風循環テスト装置は昇温時間の短縮と、ワーク温度の均一性の向上を目指し、お客様のワークに適した加熱条件を導き出す為のテスト装置です。スリット方式やパンチング方式など、様々なタイプのノズルを使用する事で、ワークに対して最適な風量、風速、風向きを提案いたします。

時短事例
アルミ部品(エンジンブロック・シリンダーヘッド・バルブボディ・他)の溶体化・時効処理の時短 / アルミビレットの熱間鍛造前の予熱の時短 / 樹脂系部品のプレス前加熱処理の時短 / 接着剤の硬化処理の時短 / エポキシ樹脂硬化処理の時短 / ガラスのアニール処理の時短 / 触媒乾燥処理の時短 / オルタネーターの含侵前の予熱の時短

熱処理炉の熱源は電気とガスどちらがいいの?

熱処理炉において重要な要素の一つが熱源です。熱処理では大別すると電気ヒータを使用する電気加熱方式と、ガスバーナを使用する燃焼加熱方式の2つに区分されます。今回は熱風循環炉を例にして、それぞれの熱源の特徴についてご紹介します。

熱処理炉の熱源としての比較を考える

(電気ヒータ・ガスバーナのメリット/デメリット一覧)

  電気ヒータ(ダクトヒータの場合) ガスバーナ(直接加熱の場合)
サイズ 大出力だと設備が大型化。 輻射を利用した加熱も可能 大出力でもコンパクト。 炉の昇温も短時間で可能
環境負荷 加熱に伴う排出物がなく用途によっては排気も不要 CO、NOx、水蒸気、ススなど燃焼による副産物が発生。排気による熱損失も大きい。
温度制御性 温度管理が容易で、微細な温度制御が可能。 昇温時間は速いが、細やかな制御は困難
単位熱量当たりのコスト 夜間電力の利用等で低減可能 一般的に電気の1/2~1/3以下
メンテナンス性 故障・劣化は少ない 定期的なメンテナンスが必要
安全性 制御が容易で保護回路などで安全性を確保しやすい 爆発・火災の危険有

条件次第で熱源の切り替えができるハイブリッド熱処理炉

どちらが良いかを選べない場合にも、どちらも選ぶという選択肢があります。弊社製品「EC Hybrid I」は電気とガスのハイブリッド熱処理炉なので、ワークの熱処理条件を熱源に関わらず最適化可能な上、従来型よりも約5割のコンパクト化を実現、多品種少量生産にも対応。フレキシブルな生産ラインの構築と省エネを両立できます。

急な試作品製作や、規格外品の対応等も可能です。

試作開発品の製作など、小ロットの製作も承ります。製品仕様の確認や新規開発品のサンプルとしてご利用ください。素材の熱処理加工に最適な条件出しなどもそのままの流れから可能です。